風と共に干からびる
更新状況とか日記
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くまがクマッタ(3)
~前回まで~

時は昔。

各地で勃発する一向一揆を、次々に平定していく信長。圧倒的実力をみせる信長に対し、1573年、宿敵武田勝頼がついにその牙をむくのであった。

勝頼有利と思われた戦いは、勝頼の騎馬部隊を、3000丁の足軽鉄砲隊で迎え撃った信長の勝利となる。その後、近江に安土桃山城を建設、自身の権力を更なる磐石へと高めていくのであった。

1582年、中国攻めに失敗した秀吉の援護のため、本能寺へ向かう信長。しかし、これが信長の最後の姿になろうとは、この時、誰も知るものはいなかったのだ……



そしてその325年後、ついに文化祭当日が訪れるのであった!!






文化祭当日、KojiKojiのクラスの教室にて。



A「でもKojiKojiが本当に王子役をやるとはなぁ。今になってもびっくりだよ」

僕「あはあはあは……なんていうか僕もびっくりだよ。まだその話を覚えてたとは

B「ほんとほんと!俺なんて最初は絶対嘘だと思ったもん。どうせKojiKojiの事だしさ~」

僕「ははは……そんな……。ま、まぁ当たらずとも遠からずというか

A「ところでKojiKoji、お前本番前だっていうのに、なんでそんな真っ黒な格好をしてるんだ?それじゃあまるで黒子みたいだぜ?

C「なにいってんの、KojiKojiが黒子なわけないじゃん!本番の前は最初こういうのを着ておくものなんだよ。ねえKojiKoji?」

僕「え、あ、うん、まぁ、こ、今回の王子はナウい王子だからね!ファッションも斬新なんだよ!うんうん!」

C「だよね~。KojiKojiが嘘をつくわけ無いじゃん。やっぱりやる時はやる人だったんだよ!

A「そうだな。疑っててごめんよKojiKoji!白雪姫役のGちゃんと仲良くなったっら紹介しろよ!」

B「お前は俺たちの希望の星だぜ!しっかり活躍して来るんだぞ!」

C「最前列で応援してるからねー!」

僕「う、うん!まかせろー!学校中をどっかんどっかん笑わせてやるぜー!じゃあ僕は本番前のトレーニングがあるから!これで行くよ!アディオス!」



……



やっべーーーーーこれはまず過ぎる。完璧に覚えてたよあいつら。
授業の内容とかは覚えてないくせに、剣心の必殺技とか下らないことばっかり覚えてる連中だからなちくしょう……。

部室へ向かっていると、そこには今回の劇の王子役である先輩が立っていました。
気の早いことに、もう衣装に着替えてしまっています。



先輩「いやぁKojiKoji!見てよこの衣装!かっこいいでしょー!ちゃんと剣も着いてるんだぜ!」

先輩は緑色の全身タイツの上に、でかめシャツを羽織り、上からベルトでとめていました。
頭にはキテレツのサンバイザーのような奇妙な物体をつけ、剣を構えながらニコニコニコニコ笑っています。

どっからどうみても王子には見えません。まるでドラクエ3の勇者のような格好です。

僕「先輩、まじでその衣装で出るんですか……?」

先輩「うん!もちろん!最初はタイツだけだったんだけど、部員の皆が去年の小道具のあまりとかを色々借りてアレンジしてくれたんだ」

なるほど……、皆100%面白がってやってるな。僕も混ざりたかったぜ、くそ!

先輩「俺な、KojiKojiには感謝してるんだ!せっかく決まってた王子の役を俺に譲ってくれて、自分は黒子をやってくれるなんて!」

僕「せ、先輩!声がでかいですって!いいから!そのことはいいから本番まで部室にはいってじっとしててください!」

先輩「え?あ、そう?でもまだクラスの連中にこの姿を見せにいっ」

僕「本番までとっておいたほうが絶対うけますって!今はもったいないっすよ!早く中にーーー!」

不思議そうな顔をする先輩を部室の中に押し込めます。

危ない。こんな場面が知り合いに見つかったら、僕が実は王子役でもなんでもないことがバレてしまうではないか!

『頑張れ!応援してるぞ!』『お前は俺たちの希望の星だぜ』クラスの連中の声が頭に響きます。

ううう、心が痛いぜちくしょう。

ここまで来たらしょうがない。腹をくくらなければ……!

全てが終わるまで……観客をだましきるしかないッ!!

部室に入り、今までの文化祭で使われてきた小道具が入った大箱を、見つめながら、僕はひっそりと決意を固めるのでした。







午後、13時。本番開始。



ついに劇が始まりました。

当分の間は、黒子の役目も、王子の出番もありません。

舞台では、鏡に対して話しかける継母役のKさん。

彼女は、雰囲気がお婆さんぽいという、あんまりな理由で推薦されました。

でも、見てると確かに納得



……



「鏡よ鏡よ。この世で一番美しい者はだれじゃ?」

「お妃さま あなたはとても美しい。けれども 白雪姫のほうが 何千倍も美しい」

継母の問いに答える魔法の鏡。

白雪の美しさに嫉妬した継母は、白雪姫を森に放置、さらに追っ手として木こりを放ち、彼女を殺そうとします

うーむ、女性の嫉妬というのは恐ろしいものです。ナンマンダブナンマンダブ。



……



白雪姫を追い詰める木こり。しかし彼は、白雪姫の美しさと清らなかな心に打たれ、逆に彼女を逃がしてしまうのでした。

木こりは、白雪姫を殺した証拠として、彼女の心臓を持ってくるように命じられています(用心深いババアだ

カモフラージュのため、白雪姫の心臓の代わりに、豚の心臓を箱に詰める木こり

木こりから箱を渡された継母は、「白雪姫も死んだ今、これで世界で一番美しいのは私だわ!」とホッと一息です。



……



魔法の鏡に話しかける継母。

しかし、白雪姫はまだ死んでいませんから、やっぱり鏡は白雪姫萌えー!みたいなことしか言いません。

激昂する継母。

そして、七人の小人の家にたどり着く白雪姫の下へと、場面は代わります。



ここで!この場面で!黒子の役がやってくるのです!

今回の劇は大まかに二つの場面に分かれています。
継母と鏡の対話やら、木こりのストーキングでなりたつ前半と、それ以降の後半と、です。

前半では、右側に魔法の鏡やら継母のイスなどを集め、左側に森のセットや木こりの大道具を置いて、一つの舞台で二つの場面を進行させていました。

後半以降は全て小人の家のセットで進みます。

全身真っ黒な格好をしているとはいえ、頭までは隠しているわけではないので、顔を見られたら僕が黒子だとバレてしまうかもしれません。

ここが勝負どころだッ!



僕を含む4人の黒子部隊が、弓から放たれた矢のように舞台とへ飛び出し、魔法の鏡やら森のセットやらなんやらを大急ぎで片付けます。

まずは鏡を二人がかりで回収、それが終わったらすぐに森のセットを持っていかなければなりません。

慎重に迅速に事を運ぶ僕ら。ここでうっかりセットをひっくり返したりしたら笑えねー!

必死に照明を避けながら、顔を出さないように、素早く大道具を出し入れします。



黒子の中でも特に、ゴキブリのように高速で動き回る僕に、客席から笑い声が起きますが、どうやら正体はバレていないようです。

30秒ほどで、舞台のセットは全て入れ替わりました。

よし!第一関門クリアーー!



……



書くのが面倒なので色々はしょって、そしてついに王子の出番がやってきました。

相変わらず勇者様スタイルなH先輩。

H先輩と僕は、髪型とかキャラなんかが割りと似ているんですが、よく見ると全然違います。
彼は普段から「俺の股間のジョイスティックが火を噴くぜ!」などとのたまう不思議ちゃんでしたが、ブーな僕とは違い、顔は割とイケメンさんです。

衣装を着ているので、客席からは遠目で分かりずらいとは言え、僕か先輩を知っている人が見れば、あっさり見抜いてしまうかもしれません。



予告どおり最前列で、王子の登場を嬉しそうに見守る級友たち。

ついに来た……絶対絶命の時……。

僕の通してきた嘘もここで暴かれてしまうのか……!



……しかし、ノコノコと舞台へ現れた王子を目の当たりにして、客席からどよめきが起こりました。

「ざわざわ……」

「うわぁー何アレ

「なんだなんだ、変態か!?

「この学校、染めるの禁止だよな?」

「ざわざわ……」

あきらかな動揺の波紋が、会場を包みます。



くくく……。

ついに来たか……!

秘中の秘……!

最後の切り札が!







もう一回だけつづく

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ねこがねこんだ(2)
~あらすじ~



先生「文化祭の劇……白雪姫。白雪姫役はGさん、そして王子役はKojiKoji!あなたよ!」

KojiKoji「な、なんですってー!?中学一年生にして学校で一番かわいいと噂されるほどの美少女のGさんが姫役と言うのは分かるけれど……」

生徒達「中学一年生にして学校で一番かわいいと噂されるほどの美少女のGさんの相手役があんな冴えないハゲとはね……。KojiKojiにはかわいそうだけどこの劇の主役はもう決まったようなものね……ざわざわ」

KojiKoji「ああ……私なんかが王子になりきることができるのかしら!不安だわ……!」

先生「KojiKoji!あなたの演劇への情熱はその程度だったのですか!!仮面を被るのです!王子の仮面を!!」

KojiKoji「そっ……そうだわ、私は演劇が好き!こんな所で負けていられない!私やります!王子の役を!」

Gさん「うっ……!いまあの子の頭上に王冠が見えた……!練習も始まる前から……あの子は既に王子という役の本質を掴もうとしている……!恐ろしい子……!」



*一部前回と違う箇所があります。参考図書:ガラスの仮面





というわけで。

王子役の決まった僕は大急ぎで自分のクラスへ行きました。

そして早速、一年にして主役級の役をつかんだことをクラスメイトに自ま……報告しに行きました。

賞賛の言葉で溢れかえる教室内。

「え!?まじでKojiKoji文化祭にでるの!?」

「しかも王子様の役で!?あれだろ、ネタだろどうせ

「相手はあのGさんでしょ?あっはっはっは。あたしがGさんなら無理無理無理

「さあさあ、KojiKojiはほっといてクラスの文化祭の準備をしようぜ」

「あ、KojiKoji、暇ならゴミ捨てておいてね。あと人数分のお弁当買ってきて」

ふふふ、やはり、こないだまでクラスのガン細胞のような存在だった僕にも、みんな尊敬の念を禁じえないようです。王子という役の持つオーラは強大なようです。こういうのを虎の威を狩る狐……いやいや、まあそれはおいといて、ひとしきり賛辞をもらったあと、僕は部室へ戻りました。

くかかかかかかか王子のお帰りだぜてめーら お茶でもだせやオラァ!

しかし部室の様子がおかしい。みんな僕にチラッと一瞥をくれては、ひそひそと小声で話し合っています。
「きゃっ、KojiKoji様の到着よー!話しかけてみようよう!」
「はずかしいわ、あなたから先に話してみてよう」
「えーそんなぁきっと近づいただけで赤面しちゃうわああ」
みたいなピンクな雰囲気ではなさそうです。
どちらかというと「うわぁ来ちゃったよあいつ。どうしよう」みたいな感じです。

いったこの短時間の間に何があったのだろうか!?

もしかして、この前友達と一緒にモデルガンのスナイパーライフルスコープで女子更衣室を覗こうとしていた行為がバレたのか!?

それとも折りたたみ式の手鏡を上履きにしこんで女子のスカートを覗こうとしていた方か!?

いや、大丈夫……!ライフルのスコープも手鏡も指紋は拭き取ってある!証拠はないはずだッ!問題ないッ!ノープロブレム!



しかしその時おきていたのは、どちらの予想も裏切る最悪の事態でした。



「実はねKojiKoji君、すごく言いにくいことなんだけど……」

「え、な、なんですか先生」

「実は……三年生のH君が、今回の劇でやる役が無くなっちゃったのよ」

「はぁ……H先輩は部長なのに……それはちょっとあんまりですね」

「そうなの。それに三年生は今年で卒業で、受験勉強もあるし、最後の劇だからね。どうしても出してあげたいのよ」

「そうですね!僕もそう思います!」

「それでね、今回の劇で一年生で役を持っているのはKojiKoji君とGさんだけなのよ。Gさんの役は白雪姫だから、女の子しかできないけど……その、言いにくいんだけどね」

「そうですね、最後の晴れ舞台が女装っていうのもまたアレですしね……って、もしかして……」

ふと窓際を見ると、H先輩がどんよりと土気色した顔で、外を眺めています。
確実にやばい表情です。今彼の写真を撮ったら、確実にエクトプラズムでも写ると思います。

そこまで来て、鈍感な僕もやっと、先生の言わんとしている事に気が付きました。

「あ、あはは、いいですよ!僕は!まだ来年も再来年もありますし!大体一年生で王子っていうのも出来すぎですしね!あははは!」

「そう?ごめんねKojiKoji君……。じゃあ王子の役は、今回はH君に回すわね」

がっくり……。残念ですがしょうがありません。このままだとH先輩があまりにも気の毒すぎる。
いいんだ、王子じゃなくたって。演劇というのは主役や脇役、様々なキャラクターあって成り立つもの。
いうなれば皆が主役なんだ!どんな形でも、劇に加われればそれでいいのだ。うんうん!





「というわけで、KojiKoji君!今年は黒子いうことで頑張ってね!じゃあ!」








黒子かよっ!





そりゃないぜ先生……。脇役にも程がある



まあしょうがないかぁ。もうみんな役が決まっちゃってるしね。

部室を後にして、トボトボと自分のクラスへ戻りました。

するとクラスの連中が集まってきます。

ああ、みんなに言わなきゃ。王子様の役は駄目になったよ、って。

生徒A「よー!KojiKoji。お前王子の役やるんだって?すげーじゃん!」

僕「え、あ、それはその」

嬉しそうに満面の笑みで迎え出る友人A。

A「いやー、俺お前ならいつかやってくれると思ってたよ!」

B「俺も俺も!」

僕「いや、その……実は今回は先輩に……

C「文化祭楽しみだわー。絶対見に行くからね!」

ううう、心が痛む。

B「しかも相手はあのGさんなんだろ!?うらやましいな」

僕「ま、まあね、やっぱかわいいよねGさん

A「すげー!白雪姫って最後にキスシーンがあったよな!あれほんとにやるのか?」

僕「ま、まぁ……それは文化祭までのお楽しみってところかな!うんうん

B「おー言うじゃねえかKojiKoji!」

C「そのままGさんに告っちゃいなよー!だいじょーぶだってKojiKojiならー。最悪ネタにはなるし

僕「まあそうだね、僕にかかったらたとえGさん……いや、Gだろうと、赤子の手を捻るようなものかな!はははは!」

A「言うねえ、さすが!」

B「いよっ!千両役者!」

僕「ははは、よせよ、劇はまだ始まってもいないんだ。いや違うな……、今始まったんだ。白雪姫という名の恋のストーリーが……僕たちの心の中でね!

B「わははは!」

A「ゲラゲラゲラ!」

僕「じゃあ僕は劇の訓練があるから、もう行くね。失敬

B「こんな時期からもう練習か!がんばれよー!」









……。

ついに言えなかった。

今からでも言っておくか!?

「実は王子はクビになってしまったんだ!代わりと言っちゃあなんだが、真っ黒な服を着て舞台の大道具を目にも見えぬ速さで撤去する闇のエキスパート、黒子をやることになったよ!まぁゲームで言うアサシンみたいなものさ!あっはっは!」

とか。

いや、駄目だ。何がアサシンだよ。いくら僕の知り合いにはアホが多いとはいえ、そんな言葉で納得するなんてありえない。漫画じゃないんだし……。





うぐぐ……どうしよう……。





……まあいっか。

文化祭まで3ヶ月あるし、そんくらい経てば忘れてるだろ。バカばっかりだし

うんそうだ、きっとそうに違いない!

よし、そうと決まったら部室で漫画でも書いてよーっと!

今にして思えば、小学生並みに自分本位で都合のいい思考です。もうほんとあれですね、バカは死ななきゃ直らないんでしょうね。



まあそんなわけで……能天気にボケーっと構え……一週間、二週間が経ち……







ついにクラスの全員に真相を話せないまま、



三ヵ月後、ついに文化祭当日がやってきたのです。











書いてて眠くなってきたので続く

うまがうまった(1)
中学の頃、僕は演劇部に在籍していました。

ちなみに高校時代は囲碁将棋部です。

まぁヒカルの碁を読んで碁にハマりだしただけ(ry



演劇部の部員は20人ほどで、当時中学1年生だった僕をいれて、男子はたったの5人でした。残りは全て女子生徒です。

こういう部活っていうのは、やはりか、男が重宝されるものです。

「KojiKojiく~ん、こっちで一緒に台本読みしようよ~」

「あ、ずるいー!KojiKoji君はあたしたちと練習するんだからー!」

「なによー、KojiKojiは渡さないわよー!」


といった、三流エロゲーのようなハーレム状況が本当に生まれてしまうのです。



この話を友人にすると、

「だからクスリはやめろって言っただろ!」

「ついに現実と漫画の区別も付かなくなったのか……」

などと言った暴言がえらいスピードで飛び交うのですが、ホントなのです!ウソじゃないんです!

まあ自分みたいな男がそんなこと言ってても、僕だったら100%信用しませんが。



そういうわけで、

劇をやる時に、王子様なる役があればすかさず

「KojiKoji君がやるのが良いと思いまーす!」



部活が終わって帰宅する時間になれば

「KojiKoji君、一人で帰るの?あの……良かったら一緒に帰らない?」



自己紹介の時に、好きな女の子のタイプは?と聞かれ、「優しい子かなぁ」と答えたら、

「キャー!私は優しいわよー!」「キエー!」



という、黄色い声が花を咲かせる幸せな学園生活だったのです。

繰り返すようですが、ウソじゃ(略





そして中学一年生の夏、学園祭の季節がやってまりました。

普段は台本読みと称して漫画ばっかり読んでる我らが演劇部ですが、この時ばかりは気合が入ります。
毎日遅くまで残って台本を選び、大道具や準備について考え、発声練習や腹筋に余念がなくなるのです。



夏休みに入り、ついに台本が『白雪姫』に決定しました。

よく言えば王道な、悪く言えばヒネリの無い選考ですが、演技によってはどんな劇にも化けそうな題材でもあります。

台本の次の課題は、配役です。

年功序列……ってわけでもないのでしょうが、2年生、3年生を中心に、推薦や立候補で次々に役が決められていきます。

最終的に残ったのは王子様とお姫様……!

主役も主役、肝心の要。

それまで盛んに自己主張して立候補していた先輩たちも、さすがに手が止まります。

僕のその時、この場を支配していた奇妙な沈黙に、初めて気が付きました。



みな一様に息を潜めて辺りをうかがっています。

これは……この空気は、殺気!

そう、まるでサバンナで獲物を狙うチーターのような!
使用後の避妊具を見て浮気を確かめる奥さんのような!
さとう珠緒を睨み付ける篠原涼子のような!
圧倒的殺気!

女子生徒の何人かが、無言の圧力という名の刃をかざし、辺りへ訴えかけています。
「お姫様の役は、誰にも渡さないわ!」……と!

外を見ると、それまでの晴天もどこへやら。雲がかげり、ポツリポツリと雨まで振ってきました。

……どうやら一雨来ることになりそうだな……。



真っ赤な血の雨がなぁーーー!





永遠にも続くかと思われた沈黙は、以外にも早く、ある女子生徒の挙手によって打ち破られることとなりました。

その子は、一年生にして演劇部一、ひいては学校内で一番かわいいのではないか!と噂されている程のカワイコチャンでした。

すると、餓えた狼のような殺気を放っていた先輩達も、その子ならしょうがないみたいな空気を出して、満場一致(たぶん)でその子が白雪姫に決定されたのです。



そうなると問題なのは王子様です。

白雪姫では、迂闊にも毒リンゴをかじった天然属性の白雪姫が、王子様のキスによって不死鳥のごとく復活をとげる……という有名なシーンがあります。

今回の劇では、本当にキスをするまでは行かなくても、観客側からは実際にしてるように見えるくらいまで顔を近づけあう、ということが決定しています。



今思えばそんなに大した事でもないですが、当時中学生だった僕にとっては、非常に胸高鳴るろまんてっくな展開だったわけなのです!

白雪姫が決まった安堵感もつかの間、今度は王子様役を巡って熾烈な争いを繰り広げることになりそうだ……!

ちなみに、僕はその時までまだ役が決まっていませんでした。
このまま誰かの手に王子様が渡ると、残った人たちは全員で黒子をやることになります。

黒事は、本番中真っ黒な服を着て大道具を出したり片付けたりする、演劇における文字通り影の主役です。
雑用とか言ったらいけません。



雑用か王子か。僕の命運を分ける、運命のひとときだったわけですが、いくらなんでも1年生に王子をやらせるって事はないだろうなぁ、と一人たかをくくっていました。

いたのですが……。

7年経った今でもこの時のことは忘れません。



「先生、王子様役はKojiKoji君がいいと思いまーす!」



なんと!同じく一年の、僕と仲のよい女子が手を上げて僕を推薦するではありませんか!

驚く僕をよそに、他の部員も、「うんうん、たしかに」「いいんじゃない、KojiKoji君で」などと相槌を重ねていきます。



おいおいマジかよ冗談だろ!?



「じゃあ、KojiKoji君で決定ねー」



白雪姫を取られてやる気のなくなった先輩が、『王子様役 KojiKoji』と、黒板に大きく書き出しました。

パチパチパチパチ…拍手が響きます。



「じゃあ役の決まってない人はみんな黒子ねー。台本のコピーをするから、役が決まってる人はとりあえずこっちに来てねー」



ま、まじかよ!ホントに僕が王子様かよ!



しかも相手は格好で一番かわいいと称される女の子……!



そして最後には……その子とのキスシーンも!







…………。

ククク……。どうやら来てしまったようだな、僕の時代が!

どうやらお客さん、あんたたちはみんな、学園祭の夜、レジェンドの生き証人になっちまうようだ。



ふっ。





ふはははははははははははははーー!











しかし、この時の僕はまだ、3ヵ月後の学祭にせまる、恐るべき魔の手の存在に、気づいてはいなかったのです……。







つづく



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