風と共に干からびる
更新状況とか日記
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目指せ自転車マスター ~落日篇~
自転車整備士免許……。

将来の自転車創業を夢見る男や、時給200円アップを夢見るバイト君など、数々のドリーマーに立ちふさがる究極の壁。
それが自転車整備士試験である!

試験一発合格すれば受験料は免除。

しかし落ちてしまえば2万5千を実費で支払わなくてはいけないという諸刃の剣。


そんな試練に、自らの夢と給料のためにたち上がったKojiKoji。
でもそんな彼を待ち受けていたのは、去年から極悪なくらい難易度の上がった筆記試験と、受かっても時給約1.9円アップという厳しい現実であった!

どうなるKojiKoji!?

というわけで行ってきました、自転車整備士講習。


これは始めて整備士試験を受ける人のために、試験の内容がどんなものであるか説明してくれたり、10数回程度に渡って試験対策を教授してくれるというものです。



この日はその前段階である特別な講習だったようです。

一人ではあまりにも心細いので、バイト先の先輩と共におもむく算段になっていました。
横浜西口に12時30分に待ち合わせです。

しかし髪の毛のセットがうまく行かない、などの諸事情により、泣く泣く10分ほど遅刻してしまいました。
遅刻はまあいいとして、待ち合わせ場所についても先輩の姿が見えません。
どうやら彼も遅刻のようです。よし、僕は待ち合わせの5分前に来たことにしよう。



到着してから10分ほど経ちました。まだ先輩の姿が見えません。

まったく!何やってるんだあの人は!遅刻をするなんて社会人としての最低限のルールをまもっていないじゃないか!まったく信じられん!もうこうなったらゲーセンでも行って時間つぶしてようかな……そう思った瞬間、携帯にメール着信が!

内容は以下のような感じでした。



悪い。今起きた。しょうがないから俺サーフィン行ってくるわ。後は頼んだ。講習サボったら殺す



この男はぁぁぁぁぁあ!しょうがないからサーフィン行ってくる』ってなんだよ!
きっと最初から来るつもりがなかったんだこの人。
しかもきっちり『サボったら殺す』と釘を刺してきている。この一文がなければ僕もサボるところだった。

なかなかやるじゃないか先輩……!なるほど、面白い。試験はもう始まっているということか!



そんなこんなで会場最寄の駅に到着しました。

しかしこれから先の道が分からない!自分で言うのもなんですが、僕は相等な方向音痴です。

ある日Yasaの家に泊まった時、あまりにも寝坊しすぎて、Yasaが先に起きてバイトへ行ってしまい、彼の家に一人置いていかれた時がありました。

腐るほど寝てから起床した僕の枕元には「一階にご飯があるから食べてね。鍵は洗濯機の中に入れておいてくれ」などと書かれた置き手紙が。Yasaありがとう!僕はきみのそんな所が大好きだぜ!
感謝しながら勝手にお風呂に入ってご飯を食べて麦茶を飲んで彼の家を後にしました。

しかし帰り道が分からない!

いつもはYasaと一緒に駅まで行っていたので、一人で帰るのは初めてなのです。必死で記憶をたどりながら歩いたのですが、結局迷ってしまい、『迷路で迷ったときは左手を壁につけて歩け』理論を駆使し、1時間半かけて駅へたどり着きました。(ちなみに普通に帰ると駅まで30分かかりません)

そんな僕ですから、とりあえず会場までの道のりを、駅員さんに聞きます。



「すいませんー。自転車の整備士の講習会かなんかがこの辺であると思うんですけども……」

「ああ、あれね、ここの角を曲がって道をまっすぐ行ってその先の(略)を行ったらその正面だよ!」

「ああそうなんですかー!親切にありがとうございます!」

「いいえー、頑張ってね」



なるほどね。



全然わかんねえ。



駅員さんは親切に身振り手振りで説明してくれたのですが、もうなんていうかこれ以上ないくらい分かりにくかったです。多分僕の頭が悪すぎるんだと思います。しかしもう一度駅員さんに同じことを聞くのは気まずい。非常に気まずい。そして恥ずかしい。ありがとうございます、とか言っちゃったし。

くそう、どうしよう!僕はどうしたらいいんだろう。

会場の場所はわかんないし、暑いし、眠いし……。そもそも僕が整備士免許を取るなんて事が何かの間違いだったんだ……。ああ、僕はなんでこんなところにいるんだろ。もういやだ。

……もう帰っちゃおうかな……。



心が挫けそうになったその瞬間、ふとYUWAの声が聞こえた気がしました。



「KojiKojiーもういいじゃん、そんな試験。どうせ留年するんだし就職なんてできるわけないんだし、諦めてカラオケでも行こうぜー!世の中金が全てだぜ、げひげひげひげひー!お前の姉ちゃんナースなんだってなー!紹介しろよ、ぐへへへへ!」



はっ……!と雷に打ち抜かれたような衝撃が体を突き抜けます。何をやってるんだ僕は!ここで逃げ出してたらまた前と同じじゃないか!もう逃げないって……4年で卒業するって……姉ちゃんは誰にも渡さないって誓ったじゃないか!こんな所で挫けてるわけには行かないんだ!

気がつくとYUWAの声はもう聞こえませんでした。ありがとうYUWA。きみのおかげで助かったよ。こんどカラオケ行こうね!



我に返った僕。すぐさま辺りを見回します。まだだ!まだ諦めるな!どこかに道が残っているはずだ!ド方向音痴の僕でも迷わず会場へ向かえるような……。

ん、まてよ……。

わざわざ自分で会場へ向かうことはないんだ。講習を受ける人は僕だけじゃないんだし……そうだ!この手があった!

突如ひらめく起死回生の逆転のアイディア!

いける!いけるぞこの講習!




ざわざわ……。


講習開始10分前を切りました。会場には40人以上の人が集まっています。どうやら何とか間に合ったようです。

ふふふ、どうやら僕の策謀が功を成したようだな!

そう、僕の考えた作戦とは!

今回の講習を受けに来たっぽい人を駅で探し、その人の後をストーカーのように追跡していく!名づけてコバンザメ作戦!
しかしこれは着いて行く人を間違えると全然違う場所に向かってしまうという諸刃の剣。素人にはオススメできない。

今回はなんとか間違えずに済んだようだ。ふ、第一次試験は無事通過、と言ったところか!



落ち着いたところで辺りを見回して見ます。

実をいうと、自転車整備士免許を取りに来る人なんて、30代以上のおっちゃんばっかりだと思っていたのですが、来てみてびっくり!以外に若い男の人もちらほら。なんと女の人までいます。後で聞いた話なのですが、僕のようにバイトで使うために来ている学生さんや、ブリジストンなどの企業に就職してから取得を図るお兄さんお姉さんなども、受験者の多くを占めるようなのです。

プリントを確認している学生さんっぽい人。いかにも職人気質な感じで、手には数多の傷跡が残るおっちゃん。若くて綺麗なお姉さん。ドライバーなどの工具を直接ポケットに入れてる中年などなど……実に様々な人間がいます。これだけ様々な人々が試験を受けるとなると……、なるほど、一筋縄ではいかないようだな。オラわくわくしてきたぞ!



講習5分前、バイト先での山本とのさんとのやりとりを思い出します。



「KojiKoji君、念のために工具を幾つか持っていったほうがいいですよ」

「え?何でですか?プリントにはニップル回し(*スポーク調整に使う工具)だけでいいって書いてありますよ」

「まぁいいじゃなーい。もっておいて損をすることはありませんよ。ドゥフフフ……(笑い声)」

山本さんは始めて講習に行ったとき、講習の先生をして「あなたはもう来なくていいですよ」と言わしめるほどの整備の技術を持っていたそうです。その山本さんが言うからには、もしかしたらプリントには書いていない裏試験などがあるのかもしれません。

そんなわけで僕はたくさんの工具を講習に持って行くことにしました。



辺りを見回しても、これだけの工具を持ってきているのは僕をおいて他にありません。

くくく……、甘い!甘いよ君たち……!試験は既に始まっているんだ。一次試験(試験会場へ到着)はそれでも通過できたようだが、そんな調子じゃすぐにリタイアだな。クックック……。



講習開始間際、僕の隣に30台後半くらいのおじさんが座りました。

汗をかきながら席に座るおじさん。すでにハゲかかった頭に、ニコニコとした表情を浮かべています。

ただのおっさんか。そう判断しようとした僕の視線が、ある一点で停止しました。おじさんのカバンです。たくさんの荷物を入れているようで、重量感のあるそのカバンから、14ミリレンチの端が覗きました。

14ミリレンチ……。それは通常ではほとんど使うことのない工具です。後ろの車輪のほうの……えーと、まあ多分どっかのマイナーなナットを開けたり閉めたりするために使う、そこそこマニアックな工具です。ドラゴンボールでいうとカタッツくらいのマニアックさでしょうか。ガンダムで言うとトリアーエズくらい。これはちょっと違うか。

それはともかくとして、思わず「ほう……」というため息すら漏れました。この人も工具を持ってきたのか。それも14ミリなんていうマニアックな道具まで。一見ただのおじさんに見えるがこやつ、かなりの使い手のようだ

間違いない。この試験、一番の強敵はこのおじさんに違いない。



早くも出会ってしまったようだな……最強の男が二人!



ゴゴゴゴゴゴ



そんな緊迫感もよそに講習が始まります。

なんだかんだ言ってましたが眠くてそれどころじゃありませんでした。

そして15分くらい経過……。



「えーでは、これから車輪を皆さんに配りますので、それで実技試験の最難関であるスポーク調整の勉強をしましょう。」

そんな先生の言葉と共に、車輪と、車輪のブレ幅を計測するスタンドが次々に配られていきます。

「では皆さん、ニップル回しを手に持ってください。これから一緒にこの道具を使ってみましょう」

スポーク調整か……。ま、これくらい僕の手にかかれば赤子の手を捻るようなものさ。5分で終わせられるところだが……ここででしゃばっては後々強敵どもに目をつけられることになるな。ここは分からない振りをして油断を誘うに限る。くくく、脳ある鷹は爪隠すのさ。



と、ここで。恐ろしい事実に気がつきました。

あ、あれ?あれれ?ニップル回しが無い!!



ごそごそとカバンをあさります。

が、無い!どこを探してもない!無い無い無い!

そんなバカな!ペダルレンチとかアレンキーとかはあるのに!ニップル回しだけ無い!

背中に嫌な汗が流れるのは感じました。サーっと血の気が引いていきます。

……やばい、忘れたくさい……。

「どうしたのそこの人?もしかしてニップル回し忘れちゃった?」

先生が僕へ厳しい眼差しを向けています。

ひいいい。ガタガタしてたら目をつけられてしまったようです。

「あ……いえ……あのその、忘れちゃったみたいです……」

「うーん、プリントにちゃんと書いてあったと思うんだけどなぁ」

シーンと静まり返る会場内。周りの人たちがじろじろとこっちを見てきています。

そんな、そんな公開処刑みたいな真似しないでください。
もういいっす!素手でやりますから!ほんともう勘弁してください!

「いくつか控えがあるからこれを貸してあげよう。次からはちゃんと持ってきてね。他に工具を忘れた人はいますか?ニップル回しを忘れると何も出来ないから気をつけてください」

その言葉を待ってましたと言わんばかりに「俺も忘れました」「実は僕も……」などという言葉が続きます。


お、お前らー!!忘れたんなら最初っから言えよ!!

僕だけ晒し首じゃないか!


僕の念もよそに大して申し訳なくもなさそうに工具を借りていく彼ら。

くそう、汚いよ!大人って汚いよ!



そんな騒動を追え、ニップル回しの作業に入ります。

車輪の中心から外側へ放射状に取り付けられている金具がスポークです。スポークの根元のネジを開け閉めすることによって張力を調整し、車輪のバランスを整えるのがスポーク調整です。



実は、これは既にバイト先で山本さんと共に練習してきています。極端な話し、最初のネジを回した回数を覚えておいて、以降全てのネジを最初と同じ回数づつ回していけば、張力が均等になりバランスが安定します。実はそれほど難しい作業ではないのです。ないのですが……。

何度やってもうまくいかない。車輪がガタガタになってしまいます。なぜだ!なぜなんだ!何度も練習したのに!こんなハズじゃあなかったのにー!

「どうですか?うまくできましたか?」

先生が一人づつ回って確かめているようで、僕の所にやってきました。

「いえ……、それがいまいちなんです……」

「うーん。内側の張力がちょっと強すぎるみたいだね。もうちょっとこうすれば……」

先生が調整するとあら不思議、あっというまにバランスが直ってしまいます。

「まあ初めてだったらこんなものだよ。次から頑張ってね」

あははは……頑張ります……」

先生は次に、僕の隣のおじさんの所へ行きました。一見人畜無害な容貌ですが、僕と同じように相当な力を秘めていると思われるおじさんの所へです。

みせてもらおうか、おじさん!あなたの力を!

「どうですか?調整はうまく行ってますか?」

先生が尋ねます。

「あ……あの、それがちっとも分からなくて」

おじさんがおどどと答えます。

……ん?ちっとも分からない?まさかこの人も僕と同じように、本番まで実力を隠す気でいr

「あら~さっぱりできてないですね。自転車いじるのは初めてですか?」

「ええそうなんですよ。会社の支給品で工具はたくさんもらったんですけど、どれも使い方が分からなくて」

へ?

「あらあら、講習に持ってくるのはニップル回しだけで良かったんですよ。他の道具はまったく使いませんから

「あ、そうなんですかー」

「そうなんですよー」

あははは。和気藹々とした空気が流れます。



普通のおっさんかよあんた!


っていうか他の工具はやっぱりいらなかったのかよ!


僕はレンチやらニッパーやらで重くなった自分のカバンを持ち上げました。なんかやけに重く感じました。

山本のオヤジ。帰ったら覚えてろ。



さんざん恥を書いた自転車講習。6時間の工程を経て第一回が終わりました。この日はこれで解散です。

どうやら僕は試験をちょっと舐めていたようだ。安易な気持ちで受かるものじゃない。

しかし、これでいい。

恥をかいてこそ、失敗をしてこそ、前へ進むのだ。僕は負けない!次はニップル回しを忘れない!山本さんへの復讐は絶対忘れない!

体の置くから燃え上がる、執念という名の炎。

このままでは終われない!



とりあえず報告のためにバイト先に電話をかけます。

今日はもう疲れました。豚丼でも食べてさっさと帰ろう。



プルルルルルル……カチャ

「はいもしもし?」

「あ、KojiKojiです。課長ですか?今ちょうど講習が終わったんで……」

「おう、KojiKojiか。わいやわいや」

電話口からは聞きなれた関西弁が聞こえてきます。このうさんくさい喋り方は課長だ。

「いやなぁ、さっきからずっと電話をかけようと思ってたんや。もう講習いってもうたんか」

会場では電源を切っていたので通じなかったのです。

「はぁ……?どうかしたんですか」

「いやなあ、お前ももう大学3年やし、このバイトもそんな長く続けないやろ?」

「はあ……まあそうですけど。それがどうかしたんですか?」

何か、何か嫌な予感が体を駆け巡ります。

「だからな、もう整備士免許受ける必要ないやん、と思ってな。経費もかかるし

「え……?」

必要ない?経費もかかる?いったいこの人は何を……。

「そういうわけでKojiKojiの受験申し込みはしてないんや。うん。だからもう来週から受けへんでいいぞー。行っても意味無いからな



な、なんだってーーーーーー!?




「へ……!?申し込みしてない……?あのそれはその、じゃあ今日の講習は……?」

帰り気をつけてなー。じゃ」

「僕その話まったく聞いてないんですけどーあのー今初めて聞いたっていうかなんで勝手にそ」

ガチャ

プー

プー

「もしもーし 聞こえますか、かちょー。かちょー?もしもーし」

プー

プー

プー









前々から……

前々からいい加減な課長だとは思ってたけど……。

そりゃないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

なんじゃそりゃあああああああああああああ





数々の個性的な受験者。1ミリを争う精密な作業であるスポーク調整。難攻不落の筆記試験。待ち受ける様々な試練……自転車整備士免許試験は……こうして……こうして終わりを告げたのでした……。





あとに残った「駅までどうやって帰るんだっけ」という疑問を抱えて僕は一人立ち尽くしていましたとさ。





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この記事に対するコメント

あーあ、、むーざん、むーざん
【2007/01/30 13:51】 URL | #- [ 編集]


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